姿勢の土台を固める筋肉、それは「抗重力筋」という呼び方をされます。起きている限り私達は「重力」によって地面に押し付けられていますが、その重力に常に対抗して自由に動けるようにしてくれているのが抗重力筋です。完全に無意識の中で働いている不随意筋となります。但し一部の抗重力筋は随意的に動かせるので筋肉は「随意筋」「不随意筋」と綺麗に分ける事ができないのでしょう。抗重力筋は非常に奥が深い筋肉です。
そこで今回は起きている間、私達の身体(姿勢)を支えてくれている「抗重力筋」についての紹介をします。
抗重力筋についての基本概念
直立姿勢でいる為に必要な筋肉で、腹側の抗重力筋と背側の抗重力筋とに分かれます。ただ抗重力筋に関する定義は体幹筋と同じく研究者によってバラバラです。ですので正解は無い定義となりますが大体は一致するので余り深く考える必要はありません。とにかく「姿勢を作る土台筋」であり「無意識の中で働いている筋肉」とだけ覚えておくようにしましょう。
頸部の抗重力筋について
主に頭部を支えてくれる筋肉になります。この筋肉のお陰で重たい頭部が細い頸部の上で支えられており、その重さがしっかり胸郭~腹腔を通して骨盤・股関節で受け止められるようにできています。逆を言えばこの筋肉がバランスを崩すと途端に頭部の重心点はズレて首から下の筋バランスが崩れ出します。
主な頸部屈筋群
・斜角筋群
・胸鎖乳突筋
・広頸筋
主な頸部伸筋群
・僧帽筋
・板状筋
・後頭下筋群
・肩甲挙筋
・脊柱起立筋群
背中の抗重力筋について
非常に重要な抗重力筋です。脊椎の前側には胸郭、内臓などの重量物があり、人間のバランスは常に前へとズレやすくなっています。特にデスクワーク等の活動は常に前かがみです。そんな「日常で最も多い姿勢」に対してブレーキ役として働いていくるのが背中の抗重力筋です。大きな負担を担う事は「運送屋さん」以外は少ないですが、長時間軽度の負担に耐え続けている為にケアが必要な筋肉と言えるでしょう。
主な背中の抗重力筋
・脊柱起立筋群
・僧帽筋
・腰方形筋
腹部の抗重力筋
背部の抗重力筋と拮抗する形で重力に対抗している筋肉です。こちらの筋肉は6パック等で有名な腹直筋を含むので良く知られています。ただ、全部で4つある事は殆ど知られていません。背筋に比べると日常生活で使う事が少なく、拘縮よりも過剰な弛緩状態にある事が多い筋肉です。
主な腹部の抗重力筋
・腹直筋
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・腹横筋
下肢の抗重力筋
運動面における抗重力だけでなく体液循環に関しての抗重力においても重要な役割を担っている筋肉群です。特に背側の抗重力筋である下腿三頭筋は第二の心臓とも呼ばれている重要な抗重力筋です。抹消まで流れ込んだ血液が心臓へと戻る為にはこの下肢の抗重力筋の力が不可欠になります。
・前脛骨筋
・大腿四頭筋
下肢背側の抗重力筋
・殿筋
・下腿三頭筋
・ハムストリングス
・ヒラメ筋
抗重力筋は姿勢筋と呼んでもいい
一般的に抗重力筋という呼び方の方が認知されていますが、その機能的な面からすると「姿勢筋」と呼んでも問題はありません。重力に抵抗する筋肉はすなわち「重力に対して姿勢を維持する筋肉」でもあるからです。「重力を制する者は姿勢を制する」という言葉は決して伊達では無いのです。姿勢を良くして更に維持する為にも「姿勢筋=抗重力筋」をしっかり使いこみましょう。