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姿勢制御は芸術の領域!姿勢はこうして作られている

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姿勢制御は芸術の領域!姿勢はこうして作られている

人間は普通に歩き、普通に走り、坂道もまた普通に歩きます。階段であっても普通に上り、下り坂も普通に下りていきます。この「当たり前」の行動を気にする人はまずいませんがこれは実は物凄い事なのです。ありとあらゆる環境において安定した姿勢バランスを常に作るという事。これは現代科学の粋を集めても未だに実現できていません。

今回はそんな「意識にのぼらないけど物凄い事」である「姿勢制御」についての紹介をします。

姿勢制御は生物の芸術

私達は日常生活の中で「足元がぐらつく」といった経験は余りしません。人混みに押された、そこに段差があるとは思っていなかった、考え事をしていた、等の「意識の外」からやってきた出来事の場合に「うわ!」とバランスを崩す程度です。

ですが、バランスを崩す環境は実は目の前に幾らでもあります。むしろ何もせずにバランスを維持できる環境は無いと言ってもよいくらいです。そんな「不安定」が前提となっている環境においてどうして安定した姿勢、重心移動が実現しているのでしょうか。それは生物に備わった「姿勢制御システム」のお陰です。私達の意識の外で常に環境の情報を集め、それに対する対処運動の情報を末梢へ届け、同時に新たな環境情報を末梢から集める。

この目まぐるしい情報のやり取りが私達の何でもない生活を実現しています。これは生きる上で最も基本的な能力であり科学ではいまだ解明されていない生物の奇跡ともいえる能力です。

姿勢制御のメカニズム1:視界

姿勢制御のメカニズムの第一は「視界情報」です。この目で見える情報が姿勢制御における第一次情報となります。目を閉じれば片足立ちが覚束なくなるのはそれが理由です。目から入る外部環境の情報が遮断される為に脳は皮膚からの感覚情報だけを頼りに姿勢維持をしようとしますがそれだけでは情報不足となります。それが結果的に「目をつぶっての片足立ちではグラグラする」という結果に結びついているのです。

姿勢制御のメカニズム2:平衡中枢

目から入る環境情報と並行して重要になるのが内耳の前庭です。いわゆる平衡中枢と呼ばれる器官となります。ここで加速と回転に関する動きを感知して平衡感覚を調整しているのです。「まっすぐ立つ」という毎日当たり前にこなしている動作はこの平衡中枢が縁の下の力持ちとして活動しているからできているのです。この平衡中枢に問題が生じると「メニエール病」「眩暈」といった世界がグルグル回って立てなくなるという「当たり前の世界の崩壊」が生じてしまいます。

姿勢制御のメカニズム3:伸展反射

平衡感覚が正常に働いていても、身体がまっすぐに立てないと意味がありません。「立つ」「歩く」「座る」といった姿勢を維持する為には筋肉の運動連鎖が必須です。立つなら大腿四頭筋は緊張し、拮抗筋のハムストリングスは弛緩をしていなくては膝が伸びないからです。同じ様に腓腹筋が弛緩して拮抗筋の前脛骨筋が緊張しなくては足首が安定しません。地に足着かない状態になってしまうのです。この様に一方が伸びすぎず、縮み過ぎずのバランスを保つ姿勢制御のシステムが「伸展反射」です。

筋肉が伸ばされた時に伸ばされた筋肉の中にあるセンサーの「筋紡錘」が反応し、伸ばされ過ぎないように筋肉に緊張命令を出します。本来は「筋肉が痛まないようにする防衛センサー」として働くのですが、実は姿勢制御のシステムとして組み込まれているのです。伸展反射は拮抗筋の伸展反射も呼び起こし、更には腱反射による自身の弛緩状態をも呼び起こすという非常に複雑な仕組みで姿勢制御に関わっています。

常に変化する姿勢制御のシステム

以上、姿勢制御のシステムについて紹介してきましたが、姿勢制御のシステムは複数のシステムが同時に互いに影響を及ぼしあっており、その命令系統は実に単調でありながら複雑です。軍隊のようなイメージがわかりやすいかもしれません。脳という総司令部は絶対なのですが、その命令は「海軍」「陸軍」「空軍」と全く違う組織におりていき、時に互いが矛盾しあう事も多いです。

人間の姿勢制御は多数の相対立する命令の絡まりあいの中で最後に残った結果です。そして命令は常に更新され休まる暇がありません。姿勢制御はプログラムで作成できるようなわかりやすい定まったシステムでは無いのです。