
「背筋を伸ばして良い姿勢を」誰もがこの言葉を耳にしたと思います。そして綺麗な姿勢を作ろうと一生懸命に「背中を反る形」で努力をしています。実はそのやり方、背骨を痛める間違った姿勢の作り方なのです。日本では綺麗な姿勢を示す言葉に「立腰」というものがありますが、これなども「背中を伸ばし、腰を立てる」という解釈がされがちです。
実は誤解が多い「綺麗な姿勢」ですが、ここでは綺麗な背筋を作る身体の構造について説明をします。
背中を反ると背中を痛める
背筋を伸ばそうと背中を反ると間違いなく背筋を痛めます。ヒールなどを履いている女性が無理に背筋を伸ばそうと背中を反らせて背部痛に悩むケースがありますが、それは正にそれです。綺麗な姿勢を意識して背筋を伸ばし「何だか伸びないなぁ」と背中に違和感を感じながら頑張って伸ばしている人は今も全国に沢山います。
背筋を伸ばすという目的自体は間違っていないのですが、その方法としての「背中を反る」行為は背骨に対して大きな負担をかけてしまうのです。
背中の骨(胸椎)は伸びない構造
そもそも背骨には「頸椎」「胸椎」「腰椎」「仙椎」という部位ごとに明確な区分がされており、それぞれが異なった役割を担っています。
<脊椎の各部位ごとの主な役割>
・頸椎は屈曲・伸展・回旋と自由度の高い動きを
・胸椎は屈曲・回旋と伸展のブレーキ
・腰椎は屈曲・伸展と回旋のブレーキ
・仙椎は癒合して体重の受け皿に
これを見て「あれ?」と気付くかと思います。そうなんです。胸椎は「伸展(反る動き)のブレーキ」という役割を与えられているのです。脊椎模型で構造を見れば一目瞭然なのですが、胸椎は瓦が重なるような独特の構造をしており、屈曲は容易なのですが伸展をしようとすると1つ下の椎骨が邪魔になり物理的に伸展がほぼ不可能なのです。
ですので、背中を反る形で背筋を伸ばそうとするのは身体の構造に逆らった「不自然なやり方」なんですね。だから無理に頑張ると筋肉や靭帯を痛めてしまい炎症痛が起こるのです。肘を無理に反らせるのと同じで逆関節をきめているようなものです。
本当の背筋は「腰」が基本
胸椎は背筋を伸ばす動作を担当していない。それならどの部位の背骨がそれを担当しているのか?主な担当者は「腰椎」です。そしてそのサポーターは「頸椎」です。胸椎はこの両者の動きに追従する形で背筋を伸ばしていきます。つまり背筋を伸ばす為に意識すべきは「腰骨」だという事です。
背中が曲がるのは腰骨が曲がるから
背中が丸まると誰もが「胸椎」に問題があると考えてしまいますが、胸椎は腰椎の曲がりに引っ張られる形で曲がるに過ぎません。悪い姿勢の本丸は「腰椎」です。腰椎が正常な前弯を失う事で胸椎や頸椎に悪影響を及ぼしてしまうのです。
腰を伸ばして「自然で綺麗な姿勢」を手に入れよう
身体の構造に従った「綺麗な姿勢」を作るにはまず「腰椎の前弯」を綺麗にすることが基本となります。腰椎が綺麗に前弯すれば胸椎は適度な後弯を描いて綺麗な背筋が生まれます。綺麗な姿勢は「背筋を伸ばす」事に違いありませんが「背筋は腰によって作られる」という事だけは頭に置いておきましょう。
そして背筋とは「伸ばす」ものではなく「伸びる」ものだと覚えておいてください。